ことばがつまる吃音と姿勢の関係|言語聴覚士が教える体をゆるめるヒント

ことばを繰り返したり、最初の音が出てこなかったり
───吃音のある方やそのご家族は、「どうすればもっと話しやすくなるだろう」と、日々さまざまなことを考えていらっしゃると思います。

吃音は、心理的な緊張や環境、疲労など、多くの要因が複合的に影響します。
「これをすれば治る」という単純な答えがないことは、吃音と向き合ってきた方なら実感されているのではないでしょうか。

今回お伝えしたいのは、吃音を「治す」方法ではありません。
からだの緊張状態と姿勢が、ことばの出やすさと深く関わっているというお話をしたいと思います。
何かひとつでも、日々の暮らしの中で取り入れられるヒントになれば嬉しいです。

吃音が出やすいとき、からだに何が起きている?

吃音の波は、状況や相手によって大きく変わります。

緊張する場面、初めて会う人、急いでいるとき
───ことばがつまりやすいのはどんなときでしょうか。

ご自身やお子さんの様子を思い浮かべてみてください。

そのとき、からだはどんな状態になっているでしょうか。

多くの場合、こんな変化が起きています。

  • 肩が上がり、首や喉に力が入っている
  • 呼吸が浅く、速くなっている
  • 体が内側に丸まるように縮んでいる
  • 足が地面から浮いている、または踏みしめすぎている

これらは、脳が「危険だ・緊張しなければ」と判断したときに働く交感神経(いわゆる “ 闘争・逃走モード ” )が優位になったサインです。

この状態では、喉や声帯の周辺の筋肉にも余分な力が入ります。

その結果、ことばを出すための繊細な動きが難しくなり、さらにことばがつまりやすくなる
───という悪循環が生まれやすくなります。

姿勢・呼吸・吃音の悪循環

緊張する
 ⇩
体が丸まり肩が上がる
 ⇩
呼吸が浅くなる
 ⇩
喉・胸に力が入る
 ⇩
ことばが出にくくなる
 ⇩
さらに焦る
 ⇩
緊張が深まる

「うまく話さなければ」という意識が緊張を生み、緊張がからだを硬くし、硬いからだがさらにことばを出にくくする。

このサイクルをことばの出し方だけでコントロールしようとするのは、とても難しいことです。

だからこそ、入り口をからだに変える
───つまり、まずからだの緊張をほぐし、呼吸を整えることが、ことばの出やすさにつながることがあります。

「ゆるめる」姿勢が話しやすさを支える理由

足の裏を地面につける

両足がしっかり地面についていると、脳は「支えられている・安全だ」という信号を受け取ります。
これは感覚の観点から見ると、接地感が自律神経を副交感神経優位(リラックスモード)へと傾ける助けになります。

会話の前や緊張しそうな場面で、意識的に足の裏を地面にゆっくり押しつけてみる
───それだけで、からだの落ち着きが変わることがあります。

お子さんが椅子に座っているとき、足がブラブラしていないか確認してみてください。
踏み台ひとつで、落ち着きが変わることがあります。

肩をゆっくり落とす

「肩の力を抜いて」と言われても、緊張しているときは難しいものです。
そんなときは、いったん肩をぐっと上げてから、ストンと落とす動きが効果的です。
意識的に力を入れることで、逆に「ゆるめる」感覚をつかみやすくなります。

肩が落ちると、喉周りの筋肉の緊張も和らぎ、声が出やすい状態に近づきます。

ゆっくり息を吐く

深呼吸というと「大きく吸う」ことに意識が向きがちですが、自律神経を整えるうえで大切なのは「吐くこと」です。
ゆっくり細く長く息を吐くことで、副交感神経が活性化され、からだと心の緊張がほぐれていきます。

話す前に、一度ゆっくりと息を吐き切る。
それだけで、喉の構えが変わることがあります。

胸を少し開く、顎を引く

体が内側に丸まっていると、気道が狭まり声の通りが悪くなります。
胸をやや開き、顎を軽く引くだけで、声の出口が整い、発声しやすい状態になります。
「背筋を伸ばす」より「胸を開く」という意識の方が、自然に体が整いやすいです。

大切にしてほしいこと

姿勢や呼吸を整えることは、吃音そのものを「なくす」ことではありません。
しかし、話しやすいからだの状態を整える一助になる可能性があります。

また、吃音のある方やそのご家族が感じる「うまく話せなかった」という経験の積み重ねが、さらなる緊張やつらさにつながることがあります。
「からだをゆるめる」という視点は、そのつらさを少し和らげるためのひとつの手がかりとして、気軽に取り入れてみてほしいと思います。

吃音については、専門的なアプローチが有効なケースも多くあります。
気になることがあれば、言語聴覚士などの専門家に相談されることをお勧めします。

まとめ

吃音が出やすいとき、からだは緊張し、呼吸が浅くなり、喉や胸に力が入っています。
その悪循環を断ち切るひとつの入り口が、「からだをゆるめる姿勢」と「呼吸を整えること」です。

  • 足の裏を地面につける
  • 肩をゆっくり落とす
  • ゆっくり息を吐く
  • 胸を開き、顎を引く

特別な道具も、大きな努力も必要ありません。
まずはからだの土台を整えることから、話しやすい環境を少しずつ作っていきましょう。


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