ことばがつまるとき(Part3)保護者と学校の連携|一緒に作る支援環境【第5回】
合理的配慮を実現するために
合理的配慮は法律で定められた大切な権利です。
ただし、「権利だからやってください」と一方的に伝えるだけでは、良い支援にはつながりにくくなってしまいます。
大切なのは、保護者と学校がじっくり話し合い、お子さんにとって一番よい形を一緒につくっていくことです。
文部科学省が示す3つの観点
学校での合理的配慮は、文部科学省が示す「3つの観点(11項目)」をもとに考えられています。
吃音の場合は、特に ①教育内容・方法 と ②支援体制 がポイントになります。
①教育内容・方法に関すること
・教育内容の調整
・学習上の配慮
・評価方法の工夫
②支援体制に関すること
・専門性のある指導体制の整備
・関係者の理解促進・啓発
・災害時等の支援体制の整備
③施設・設備に関すること
・施設・設備の整備
・情報保障
・災害時等への対応
個別の教育支援計画の活用
お子さんの状態や困りごとを学校全体で共有し、共通理解を深めるために、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成することが推奨されています。
決めた配慮も、成長や気持ちの変化に合わせて、いつでも柔軟に見直すことが大切です。
計画に書いておくと良い内容
1.お子さんの吃音の状態
・いつ頃始まったか
・どのような症状か
・波があるかどうか
2.困っている場面
・音読、発表、出席確認など具体的に
3.本人の思い
・どんなことがつらいか
・どうしてほしいか
4.話し合って決めた配慮
・音読は斉読にする
・発表は事前準備の時間を設ける
・「秘密のサイン」を決めておく など
5.見直しのタイミング
・定期的に効果を確認
・お子さんの成長に合わせて柔軟に変更
校内での情報共有の大切さ
担任の先生だけでなく、お子さんに関わるすべての先生が吃音について理解することが大切です。
共有したい情報
・音楽・体育・図工などの専科の先生にも伝える
・学年が上がる際に、しっかり引き継ぐ
・必要に応じて支援員や通級など学校内の資源を活用する
校長先生のリーダーシップのもと、学校全体で協力して支える体制が理想です。
通級指導教室(ことばの教室)との連携
もしお子さんがことばの教室に通っている場合は、
担当の先生や言語聴覚士と連携することで、より効果的な支援ができます。
・担任の先生が悩んだときの相談先
・お子さんの様子の共有
・学校と家庭をつなぐ役割
ことばの専門家の知識を、大いに活用しましょう。
心理的安全性を支える環境づくり
安心して話せる環境は、お子さんの力を最大限に引き出します。
負担を軽くしつつ、学習に支障が出ない範囲で工夫をしていくことが大切です。
せかされない環境
・発言に十分な時間を取る
・「早く」「次の人」などの声かけを控える
失敗しても大丈夫な雰囲気
・どもっても笑われない
・話し方ではなく、内容を評価する
クラス全体への理解を深める取り組み
理解啓発のポイント
1.本人が「説明してほしい」と望んだときに行う
2.本人のいないところで勝手に話題にしない
3.伝える内容
・わざとどもっているわけではない
・本人も困っていること
・みんなにできるちょっとした配慮
保護者の方へ
言語聴覚士として、そして支援に関わってきたものとして、私が一番お伝えしたいのは、
「吃音があっても、その子らしく話せる環境は、必ずつくれる」
ということです。
そのためには、
1.お子さんの気持ちを最優先に
・何を望んでいるのか
・どんな配慮が助けになるのか
2.学校と丁寧な対話を続けること
・「お願い」ではなく「一緒に考える」姿勢で
・困ったことはすぐ相談
・できていることには感謝を伝える
3.専門家の力を借りること
・ことばの教室
・言語聴覚士
・必要に応じて医療との連携も
合理的配慮は「スタート」
合理的配慮が提供されることはゴールではなく、支援のスタートラインです。
配慮が適切に行われることで、
・お子さんの自己肯定感が上がる
・クラス全体の理解が深まる
・先生方の気づきや指導力も向上する
つまり、吃音のあるお子さんへの配慮は、クラス全体をよりよくしていくことにもつながるのです。
最後に
お子さんが自分のペースで、安心してことばを発することができるように。
そのために必要な支援を、保護者のみなさんと一緒に考え、つくっていきたいと思っています。
どんな小さな不安でも大丈夫です。
どうぞ遠慮なくご相談ください。
お子さんの可能性を信じながら、一歩一歩進んでいきましょう。
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