吃音支援への想い(Part3) “ 治す ” より “ ともに歩く ” 選択肢の大切さ【第6回】

支援の目的をどこに置くか

吃音の原因はまだはっきりとはわかっていません。
そのため、薬や手術のような「根本的に治す治療」はありません。
現在行われている方法は、あくまで 困りごとを軽くするための対症療法になります。

こうした支援に携わるなかで、私は次第にこう考えるようになりました。

吃音を完全に治すことだけがゴールではない。
吃音があっても、自分らしく安心して話せること。
そこにこそ支援の大切な目的がある。

世界的な潮流:受容的アプローチ

この考えは、近年世界的にも注目されている「受容的アプローチ」や「認知行動的な視点」とつながっています。

吃音の原因は一つではなく、お子さんによって症状も背景もさまざまです。
すべての人に同じ方法が効くわけではありませんが、組み合わせることで、

・ことばのつまる症状
・吃音にまつわる不安や緊張

こうした困りごとが軽くなる場合があることがわかっています。

主なアプローチは、次の3つです。

● 流暢性形成法(どもらず流れるように話す練習)
● 吃音変容法(つまる時の苦しさを和らげる練習)
● 認知行動療法(吃音にまつわる不安や否定的なイメージをやわらげる)

これらを組み合わせる 統合的な支援 が、今の主流になりつつあります。

私が子どもたちやご家族に伝えていること

私はいつも、お子さんや保護者の方に、こんなお話をしています。

「吃ってもいいよ」
吃音は決して「恥ずかしいこと」や「間違い」ではありません。
安心できる環境が整えば、本来の力を発揮して話せる場面も増えていきます。

「でも、吃らない方法もあるよ」
流暢性形成法や吃音緩和法など、必要に応じて話し方の工夫を学ぶこともできます。
これは「治す」ためのものではなく、“ その場に合わせて話し方を選べるようになるための技術 ” と考えていただければと思います。

「どっちも選べるよ」
一番大切なのは、“ 自分で選べること ” です。

・吃音があってもそのまま話す
・技術を使って流暢に話す
・場面に応じて使い分ける

この「選択肢を持てること」が、お子さんの自信につながっていきます。

「伝えたい気持ち」に焦点を当てる支援

年齢や発達段階によって、支援の内容は少しずつ変わっていきますが、どの時期でも共通して大切にしているのは、「吃音をコントロールすることだけが目的ではない」ということです。
本当に大切なのは、「伝えたいことを伝える」経験を積むこと。

幼児期:安心して話せる環境づくりが中心
学童期:気持ちに寄り添いながら、必要に応じて話し方の技術も提供
青年期以降:認知行動療法なども含め、より総合的な支援へ

お子さん一人ひとりのペースに合わせて、柔軟に寄り添っていきます。

「ともに歩く」という姿勢

吃音に必ず効く “ ひとつの方法 ” は、まだありません。
だからこそ、私は支援者として次の3つを大切にしています。

1.その子に合わせた支援

吃音の段階や気持ち、家庭や学校の環境まで含めて、
その子に合った支援を一緒に考えます。

2.長く寄り添う伴走者であること

吃音は、短期間で劇的に変化するものではありません。
お子さんの成長とともに、必要な支援も変わります。

だから私は、治す人ではなく、歩みを支える伴走者でありたいとつねに思っています。

3.ご家族全体のサポート

病院だけでも家庭だけでも、片方だけでは十分とはいえません。
正しい知識や家庭での環境づくりをお伝えしながら、保護者の方の不安にも寄り添うことを大事にしています。

私が目指している支援のかたち

・エビデンスに基づきながらも、柔軟に
・専門的でありながら、あたたかく
・技術を提供しながら、心に寄り添う

このバランスを大切に、お子さん一人ひとりの可能性を信じて支援を続けています。

おわりに

吃音があっても、「自分らしく話せる」と感じられること。

そして、その姿をあたたかく見守り、寄り添ってくれる大人がそばにいること。

それが、お子さんの安心感や自己肯定感につながっていくと、私は信じています。

吃音について、ご家庭や学校、周囲の人が理解を深めてくれることで、「話すこと」への不安が軽くなり、自然と話しやすくなることが期待できます。

このブログが、吃音について考えるきっかけになればうれしいです。

どうか、小さなことでも気兼ねなくご相談ください。
お子さんの可能性を一緒に信じて、ゆっくり歩んでいきましょう。


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