【ST解説】発音の土台は「食べ方」で決まる?離乳食・食事と発音の深い関係

発音の土台は「食べること」から育つ

「サ行が言えない」
「何を言っているか聞き取れない」

───こうしたお子さんの発音の悩み、実は赤ちゃんの頃の " 口の使い方 " と関係している可能性があります。

発音はことばだけの問題ではありません。
哺乳・離乳食・食事といった日常の " 食べる経験 " の積み重ねによって、発音の土台が育まれていきます。

この記事では言語聴覚士(ST)の視点から、お口の発達と発音の関係・離乳食から食事への移行で気をつけたいこと・食事姿勢・家庭でできる関わり方をご紹介します。

発音は「お口の発達」の延長にある

発音は突然できるようになるものではありません。
「吸う → 飲み込む → 噛む → 息をコントロールする → 音を出す」という発達の流れの中で、少しずつ育っていきます。

赤ちゃん期(哺乳)

母乳やミルクを飲むとき、赤ちゃんは以下のような動きをしています。

  • 唇をしっかり閉じる
  • 舌を前後にリズミカルに動かす
  • 呼吸と飲み込みを交互に調整する

これらはすべて発音の土台になる動きです。
哺乳の時期から、すでに発音の準備は始まっています。

離乳食期(お口の機能が発達する時期)

離乳食が進むにつれて、お口の動きはどんどん複雑になっていきます。

初期(ごっくん期):舌で食べ物を上顎に押しつけてつぶす動きが育ちます。
中期(もぐもぐ期):舌を左右に動かし、歯茎でつぶす動きへと発展します。
後期(かみかみ期):奥歯でしっかり噛み、まとめて飲み込む動きが育ちます。

この時期に舌・唇・あごの使い方の基礎が形成されます。
「月齢だから進める」のではなく、お子さんのお口の動きに合わせたステップが大切です。

幼児期(発音へ)

お口の動きの土台が育つと、息を細かくコントロールし、舌先を素早く正確に動かすことができるようになり、発音が一つひとつ安定していきます。

発音がはっきりしないお子さんに見られるお口の特徴

発音に課題があるお子さんには、以下のような傾向が見られることがあります。

  • お口がポカンと開きやすい(唇を閉じる力が弱い)
  • 舌の動きが少ない
  • 噛まずに丸飲みしがち
  • 柔らかいものばかり好む
  • 食べるのにとても時間がかかる

これらは発音だけでなく、口腔機能の発達と関係している可能性があります。
こうした特徴があるからといって、必ずしも発音に問題が出るわけではありませんが、気になる場合は専門家への相談をご検討ください。

年齢別|発音の発達と様子見の目安

3歳ごろ

不明瞭な音が多い時期です。
家族に伝わればOKです。

4歳ごろ

基本的な音は獲得されます。
サ行はまだ不安定な時期です。(半分以上聞き取れない場合は相談を検討しましょう)

5〜6歳

発音が安定してくる時期です。
サ行・ラ行など複数の誤りが続く場合は要確認です。

6〜7歳以降

発音はほぼ完成します。
誤りが残る場合は専門的支援が有効です。

よくある発音の誤りのパターン

  • サ行→タ行に置き換わる(「さかな」→「たかな」など)
  • ラ行がうまく言えない
  • 「き」「し」「ち」がうまく言えない(側音化構音)

これらは発達の過程で見られることがありますが、長く続く場合は練習によって改善できることが多いです。

離乳食・食事で気をつけたいこと

① 食形態を急ぎすぎない・遅らせすぎない

「月齢だから」ではなく「この子のお口はどう動いているか」を見ながら、段階に合わせて食形態を変えていきましょう。

② 噛む経験を意識的に作る

柔らかいものばかりになると、舌や顎を動かす機会が減ります。
発達段階に合った食材の固さで、噛む経験を積ませてあげましょう。
左右バランスよく噛むことも大切です。

③ スプーンの使い方に注目する

スプーンをお口に入れるとき、唇でしっかり取り込めているか確認してみてください。
押し込むような食べさせ方が続くと、唇を使う力が育ちにくくなることがあります。

食事のときの姿勢も大切

食べ方と同様に、見落とされがちなのが「食べるときの姿勢」です。
食事場面でも以下の点を意識してみてください。

食事姿勢のポイント

  • 足が床や足台にしっかりつく
  • 骨盤が立っている(背もたれにもたれすぎない)
  • テーブルの高さが体に合っている
  • 頭がまっすぐ安定している

この姿勢で食べることで、噛む力・舌の動き・飲み込みが育ちやすくなります。

ソファで寝転んだまま・画面を見ながらの前かがみ・足がブラブラした状態での食事は、食べる機能の発達に影響することがあります。
できる範囲で食事環境を整えることが、発音の土台づくりにつながります。

こんなときは専門家へ

  • 6〜7歳になっても発音の誤りが続いている
  • よく聞き返される・伝わらないことが多い
  • 食べ方・飲み込みが気になる
  • 口の形や舌の動きが気になる

焦らず、でも見逃さず。
お子さんのペースに合わせて関わっていきましょう。


毎日の食事は、単なる栄養補給の時間ではなく、きれいな発音を作るための大切なトレーニングの時間でもあります。
「今の食べ方で大丈夫かな?」と不安になったときは、月齢の目安にとらわれすぎず、まずはお子さんのお口の動きをじっくり観察することから始めてみてください。
もし気になることがあれば、一人で抱え込まずにお近くの言語聴覚士などの専門家へ気軽に相談してくださいね。

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